自己紹介
自己紹介をお願いします。
大阪の高槻高校出身で、現在京都府立医科大学医学部医学科の5年生です。医学の勉強をコツコツしながらバトミントン部と医道部の活動や家庭教師のアルバイトを頑張っています。
医道部の先輩と友人と鴨川にて
これまでの活動について
これまでの医学部生活について教えてください。
もともと医学部では勉強を頑張ろうと決めており、自分で目標を立てて勉強してきました。学年ごとの成績上位者の表彰も励みになりました。やるべきことはきちんとやりながらも、メリハリをつけて遊びや課外活動を楽しむ子ども心を忘れないことが大事だと思っています。
日本の6年制医学部では目標がないと何もないまま過ぎてしまう傾向がありますが、アメリカの医学生は競争社会の中で4年間に必要な知識を集中して学ぶため中弛みすることなく学習意欲を保っていると聞きます。切り替えるタイミングは人それぞれだと思いますが、私は3回生のとき、それまでの医学の勉強だけでなく他分野についても知見を広めようと決めました。大学内外の勉強会に積極的に参加する中で、当時本学5回生だった稲葉さんをはじめとする先輩方に出会い、総合診療や家庭医が担う社会とつながる医療の役割という、医療の新しい可能性に触れることができました。
また、4回生のときに講義でAI(人工知能)の医療での応用を学び、医師の働き方が将来変わっていくだろうと考えました。そこで将来医師としてAIを有効に使うためにAI開発者と対等に話し合えるようになろうと、G検定を取得しました。データサイエンスやディープラーニングの知識を学ぶ人向けにG(general)検定とE(Engineering)検定がありますが、G検定は開発技術よりも幅広く体系的な知識を重視した検定で、専門家と議論できるよう十分な知識を身につけることができます。
井田君は自分の学んだ知識を勉強会という形で同級生・後輩にも還元してくれます。そんな活動の一環である医道部はどうやって始まったのですか?
始まりは、先述した稲葉さんが始めた鴨川カンファです。症例検討を軸に医学を学ぶ勉強会を有志で開催していたのですが、先輩方の卒業後も続けられるよう、部活にしました。様々な学年が集まって発表や自由な意見交換を行い、先輩や教員からのフィードバックを大事にしています。医学以外にも視野を広げられるよう医学以外の分野について調べたり、プレゼン能力を高められるようにしたいと思っています。低学年のメンバーと一緒に医学文献の輪読をしたり近隣の他大学と共同で勉強会をすることも計画しています。
先輩が教えるだけでなく、参加者全員が何か学べるような勉強会にしようとしてきたんですね。医道部を続ける上で苦労したことはありますか。
部設立から一緒に活動してきた先輩が引退されたので勉強会の準備を一手に背負うことになり大変ですね。これを見直すために、低学年のメンバーが発表できる機会を作って、わからないことを高学年でフォローするようにしたいと思っています。運営方針が定まればもっと部員を増やしたいですね。医道部のコンセプトとして、教科書上の医学と実際の臨床のギャップを埋めるような場所にしたいと思っています。かる鴨カンファを作った先輩方の、臨床にのっとった学びの場をつくろうという意志を途絶えさせたくないと思います。
先輩の意志を引き継いでこれからも素敵な勉強会を作っていけるといいですね!
医道部の活動の様子
将来について
将来の目標はありますか?
リウマチ・膠原病を専門にしたいと思っています。もともと自分の視力が悪く眼科学に興味があったこと、2回生で参加した学会で眼科医の先生と知り合ったことをきっかけに、眼科に魅力を感じるようになりました。眼科への関心をきっかけに他の科についてより深く勉強していく中で、リウマチ・膠原病は老若男女の全身を診られるところに興味をひかれていきました。また、免疫に対する薬が開発される度に、それに伴う副作用が問題となるのでリウマチ科は需要が尽きないし、それに家庭医をかけあわせていけたらいいなと思うようになりました。
素晴らしい先輩方や仲間に出会い、自分が人よりも発想力や柔軟性が優れていているわけではないと痛感していますが、得意とすることだけは周りからも頼ってもらえる、そんな一角の人間になれるよう頑張りたいです。同時に、家庭医として全人医療に携わることができれば尚良いなと考えています。
井田君の努力の源はなんですか?
勉強していると楽しいという理由が一番ですね。同世代で活躍している人を生で見ていると、負けられないなという気持ちになりますし、自分の信念として何でも頑張るようにしています。医学を学ぶと好奇心が満たされることも大きいですが、学んだことは直接患者さんに還元できるというのが良い所だと思っています。実学だからこそ、患者さんを治すという目に見える形で結果がでる。いいことしかないな、と。勉強のしんどささえ乗り越えればその先に待っているのはすごく大きいものだと思います。色々な場で非医療職の方と関わり、体や病気について相談される機会があるのですが、自分の学んだ知識で相手に喜んでもらえるのが嬉しいですね。それもあって、患者教育にも興味があります。
患者教育とはどういうことでしょうか?
患者教育は医療者が患者さんや患者さんのご家族に対して、健康管理に関する情報をお伝えする様をイメージしてもらえればいいと思います。例えば、腎機能が悪い人に透析になるとはどういうことかを伝えるというのは大事ですよね。
将来は地域で開業して市民教育ができるような多目的施設を作り、生活に役立つ知識を共有する場を作りたいです。風邪に抗菌薬はいらないといった医学の基本的な知識のほかにも、異なる分野で活躍している人が講演して地域の人と共有できる、そんな場所を作ることが一つの夢です。医学にとどまらず患者さんからも仕事のこと、趣味のことを教えていただけたら良いなと思います。そうして、医療者と患者さんでお互いに教えあえることができれば素敵だなと思います、夢のような話ですけど(笑)。
この計画を考えるようになったのは、2019年に本学で開催された小児患者向けプラネタリウム企画のボランティアをした際、企画立案者である山本和幸さん(金沢大学)がおっしゃった「病院は病気を治す場所であるだけでなく、何かを得られる場所にしたい」という言葉です。自分も、誰もが何かを得られる、そんな場所を作りたいと思いました。開業はルールに捉われないので、地域の人の生きがい作りにも貢献するという目標が実践できる。どんな人でも社会とつながっているという実感を得られるような施設を作り、「心の医療」をやってみたいです。
旅先のアメリカにて
これからの府立医大について
府立医大の教育について意見を聞かせてください。
深い医学知識はもちろんのこと、最先端の知見を学べることが良いところです。例えばサーカディアンリズムや眼科羊膜移植の知識を、一流の研究者から直接教えてもらうことができるのは府立医大ならではですね。
教育体制について意見があるとすれば、昨今は学生の医学知識をボトムアップしようという傾向の中で教養課程が縮小されていますが、今後求められる教育はそれではないと思います。というのは、AIに代表される新技術が医師の代わりとなるような時代に社会に必要なのは、均質な医学知識を持った学生でなく、自分の力で考え実行できる人材だからです。そのために社会を知る機会をもっと与えるべきです。医学教育はもちろん大事ですが、厳しい試験勉強に縛られずに学生が研究や課外活自由に取り組める余地を残して欲しいと思います。
今後医師の役割はどのように変わっていくと考えますか?
ジェネラリストとスペシャリストの二極化が顕著になるのではないかと思います。医療の専門化が進む時代であるからこそ、専門家の架け橋となるジェネラリストの存在は必須であると考えています。ジェネラリストとスペシャリストが互いに補い合えるような医療が理想なのではないでしょうか。
旅先のアメリカにて
最後に、後輩に一言メッセージをお願いします。
他人からの評価を気にせず、自分のしたいことを最後までやってみて欲しいです。上手くいかなくても自分には向いてないという適性を知る大きな学びになるし、その先に自分のやりたいことが見つかってくるので、何でも頑張って挑戦したらいいと思います。
自分自身の興味に従ってやり切ることが大切なんですね。ありがとうございました!
取材・文:磯邉綾菜(医5)橋本寛子(医5)